
欧州各国で防衛費の支出を増やし安全保障を強化すべきだとの声が高まり、欧州の防衛産業に追い風が吹いている。ドイツでの総選挙で政権を獲得したキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が「米国からの自立」を最優先課題に掲げたことで、防衛関連株への期待がさらに高まった。ドイツのラインメタルやイタリアのレオナルドなどの株価が上昇傾向を示している。
現地時間24日、ドイツ株式市場でラインメタルは前営業日比6.4%高の951.4ユーロ(約14万9,238円)で取引を終えた。前日に行われたドイツ総選挙でCDU/CSUが政権を獲得したことが要因である。次期首相候補のCDUのフリードリヒ・メルツ党首は出口調査後の公共放送のインタビューで「米国は欧州の運命に無関心だ」と述べ、「欧州は独自の防衛能力を構築する必要がある」と強調した。
市場ではメルツ党首の発言を好意的に受け止めた。モーニングスターの主席株式ストラテジストであるマイケル・フィールド氏はCNBCに対し、「CDUの選挙勝利後の発言は極めて国家主義的で、ドイツが自国防衛を強化し米国への依存を減らすべきだという考えは、国防費増額の必要性と合致する」と指摘。「こうした環境は防衛産業にとって追い風となるだろう」と付け加えた。
ドイツ銀行のエコノミストらもこの日、顧客向けに送ったメモで「欧州の不安定な安全保障環境を考慮すると、CDU/CSUと社会民主党(SPD)は原則的に防衛費増額に和解する可能性が極めて高い」との見方を示した。

12日、ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチン露大統領の電話会談を皮切りに、両国が欧州を排除してウクライナ戦争の終戦交渉を進める中、欧州では安全保障への危機感がさらに広がり、防衛費支出を増やすべきだとの共通認識が形成された。欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は14日、ドイツのミュンヘンでの安全保障会議で「加盟国が防衛費を増額できるよう、EUの財政規律の免責条項発動を推進する」と表明した。
このような状況下で、グローバル資産運用会社ヴァンエックは、ドイツの防衛企業であるラインメタル、イタリアのレオナルド、スウェーデンのサーブなどが恩恵を受けるだろうと予測した。レオナルドとサーブはこの日の時点で、過去1カ月間でそれぞれ22.77%、28.76%上昇。ラインメタルは31.55%急騰し、際立った上昇を見せた。
この日、ドイツ銀行はラインメタルの目標株価を従来の780ユーロ(約12万2,346円)から1040ユーロ(約16万3,130円)に引き上げた。同行の株式アナリストであるクリストフ・ラスカウィ氏は「欧州が最も必要としている防衛システムをラインメタルがどのように提供できるかに関する詳細な分析が出れば、株価はさらに上昇するだろう」とし、「ラインメタルは複数の主要製品で垂直統合を実現しているため、生産能力を迅速に拡大できる優位性がある」と分析した。