欧州が自力で安全保障体制を構築するには10年以上かかる、防衛力強化の現実的な障害

引用:ロイター通信
引用:ロイター通信

イギリスの「エコノミスト」誌は、欧州が米国の支援なしに独力で安定した安全保障体制を構築するには10年以上かかるとの見方を示した。ウクライナへの師団規模の派兵すら困難だとの指摘とともに、ロシアの核の脅威に対抗する能力を高めるにはさらなる時間と費用を要すると分析している。

25日(現地時間)、「エコノミスト」誌は「欧州は自力でプーチンに立ち向かうことができるか」と題する記事で、米国の支援なしに欧州が独自の防衛力を強化するには多くの現実的な障害があると伝えた。長年維持されてきた大西洋同盟に亀裂が生じ、世界の安全保障秩序が再編される中、欧州が「孤立」しているとの見方が相次いでいる。アンデルス・フォグ・ラスムッセン前北大西洋条約機構(NATO)事務総長は最近の同誌への寄稿で、「欧州は存在そのものが脆弱であるだけでなく、実質的に孤立しているという事実を直視しなければならない」と指摘した。

同誌は、欧州が自力防衛体制を確立するのに10年かかる可能性があると予測している。まず、英国とフランスが主導するウクライナ平和維持軍の駐留問題を見てみよう。終戦後に配置される平和維持軍の規模は2万人から4万人程度と言われている。これらの部隊は前線ではなく、ウクライナの主要都市、港湾、原子力発電所、重要施設などを防衛する役割を担うと予想されている。

しかし同誌によれば、欧州諸国は現在、戦闘可能な一つの旅団さえも編成するのが困難な状況にあるという。ウクライナ国内のロシアおよびウクライナの旅団は約230個に上る。欧州各国が兵力を集めてウクライナに派兵すれば、欧州本土の防衛力が低下する可能性がある。

現在、米国を含むNATOの戦争計画を満たすには、欧州各国はGDPの3%を国防費に充てる必要があるが、これすら達成できていない国が多い。NATOは新たな目標として3.7%を検討中だとされているが、米国の関与が薄れることを考慮すれば、GDPに対する国防支出比率は4%を大きく上回る可能性もある。

同誌は、資金面だけでなく軍事力も不十分だと指摘している。軍事支出を増やしても、実際の戦闘能力に転換するにはさらなる課題があるという。欧州のシンクタンク・ブリューゲルは、米軍30万人を代替するために欧州軍が50の新規旅団を創設する必要があり、そのうち相当数は重装備化が必要になると推定している。必要な主力戦車は1,400両に達すると見積もられている。

現在、欧州空軍は現代的な戦闘機を多数保有しているものの、長距離攻撃用の精密誘導兵器や敵の防空網を無力化するミサイルが不足している。戦闘機のパイロットや乗員は十分な訓練を受けておらず、特に高強度の空中戦遂行能力は、スウェーデンを除けば不十分なレベルにある。また、欧州の空軍は電子戦や情報・監視・偵察(ISR)能力において米国に絶対的に依存している。

英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャスティン・ブロンク研究員は、「欧州は多くの最新鋭戦闘機を保有しているが、敵の防空網を破壊するのに十分な弾薬がなく、訓練されたパイロットも不足している」と説明した。さらに「空中電子戦や情報・監視・標的獲得・偵察(ISTAR)能力はほぼ全面的に米国が提供している」と付け加えた。

NATOの指揮権も問題だ。NATO軍事機構の頂点に立つ欧州連合軍最高司令部(SHAPE)を率いるNATO欧州連合軍最高司令官(SACEUR)は、現職のクリストファー・カボリ将軍のように常に米軍将官が務めてきた。RUSI研究員のマシュー・サヴィル氏は、「欧州の大規模軍事組織運営の専門家は英国とフランスに集中しているが、イスラエルがガザ地区やレバノンで展開したような規模と強度の複雑な作戦を遂行する能力があるかは疑問だ」と述べている。

弾薬面でも、ウクライナ戦争の3年間で欧州の砲弾生産は急増したが、依然として北朝鮮の支援を受けるロシアに後れを取っているとエコノミスト誌は伝えている。英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)の報告書によれば、NATO欧州諸国が2022年2月から2024年9月までに新規調達した防空システムの34%が米国製だった。欧州製(52%)よりは少ないものの、多連装ロケット砲や長距離防空システム、ステルス機など重要な分野で米国に依存している。

もう一つの大きな問題は、米国が提供する核の傘だ。米国が欧州の安全保障から手を引けば、ロシア本土深くまで到達可能な戦略核兵器と、欧州空軍が搭載できるよう欧州に配備されている「準戦略」核兵器の両方を失う可能性がある。同誌は「80年間、欧州の防衛は米国の核の傘の下で保護されてきた。もし欧州が本当に孤立するなら、問題は米軍が欧州のために戦わないという点だけでなく、欧州に配備された米国の核兵器も失う可能性がある」と報じている。

英国とフランスが保有する核弾頭は約400発で、1,700発以上を保有するロシアには遠く及ばない。これを2〜3倍に増やそうとすれば数年を要し、通常戦力の増強に必要な費用を核戦力に振り向けなければならなくなる。

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