
マイクロソフト(MS)創業者のビル・ゲイツ氏が70歳を迎え、自伝『ソースコード:私の始まり』(Source Code: My Beginnings、以下『ソースコード』)を通じて自身の歩みを振り返った。これはビル・ゲイツ氏の初の自伝であり、今後出版予定の3部作の第1作となる。
4日に出版される『ソースコード』について、ビル・ゲイツ氏は自身のウェブサイトで「70歳を前に、ようやく人生について少し理解できた気がする」と執筆の理由を説明。この本では、幼少期から1970年代の創業、アップルとの初契約に至るまでを扱うと紹介した。
ビル・ゲイツ氏は幼少期について「今の時代なら自閉スペクトラム症と診断されていたかもしれない」と述べ、「数日間言葉を発せず、部屋に閉じこもって一つのことに没頭していた」と回顧した。
シアトルの中流家庭で、弁護士の父親と成功した社会起業家の母親のもとで育った彼は、「部屋や周囲は常に散らかっており、小学校の成績はBやCだった」と語った。また、特定の事柄に執着し、他人の反応に鈍感で、無礼で不適切な行動をとることが多く、6年生の時には食事や登校時間以外は数日間言葉を発せず部屋に閉じこもっていたことを明かした。
こうした性向について「母の影響を受けた」とビル・ゲイツ氏は語った。実際、自伝には「家の時計は常に8分早く進む『ママ時計(Mumtime)』に合わせられていた。母は食事時間の厳守、ベッドメイキングなどを絶えず注意し、服装やマナーを強調していた。母は『お前がうまくできないと、私はとても恥ずかしい』とよく言っていた」という内容が記されている。
ビル・ゲイツ氏は心理療法を受けて具合が改善。その後、名門私立学校に進学し、数学コンクールで1位を獲得したことをきっかけに勉強に励み始めたという。
社交性は欠けていたものの、卓越した集中力でコンピュータプログラミングに没頭した。10代で初めて作成したコンピュータプログラム(コード)は「雪山でのハイキング中、非常に疲れ、全身が濡れた状態で頭の中で考え出した」と紹介。高校生の頃には全校生徒にコンピュータを教えるほどの実力を身につけていた。
ハーバード大学に進学後、ビル・ゲイツ氏はさらにコンピュータに没頭し、「1か月間、1日2時間程度しか寝ずに674時間をコンピュータに費やした」と述べた。結局、ビル・ゲイツ氏はハーバード大学を中退し、MSを創業した。
ビル・ゲイツ氏は、グーグル、フェイスブック、アップルの創業者たちとは異なり、優れたプログラマーとしての強みを持っていたが、MSの成功については「運(luck)」だったと自己評価した。
「MSのような会社を立ち上げ、世界の頂点に立つことは、信じられないほど多くの要素が重なり合わなければ不可能だ」とビル・ゲイツ氏は語り、「私が生まれた年、両親の育て方、白人男性であること、『あなたの子供は変わり者だけど、賢いよ』と言ってくれた先生、現実感を与えてくれたメリンダとの結婚など、様々な要因が挙げられる」と付け加えた。
ビル・ゲイツ氏は1987年、31歳で最年少の億万長者となり、長年世界長者番付の首位を維持した。現在の資産は1,070億ドル(約16兆6,700億円)で16位だが、財産には興味がないという。MSの社員だったメリンダ氏とは億万長者になった1987年に結婚したが、2021年に離婚。彼は「離婚は人生最大の失敗だった」と振り返った。
ビル・ゲイツ氏は現在、オラクルのCEOだった故マーク・ハード氏(2019年死去)の妻ポーラ・ハード氏(62)と交際している。しかし、「メリンダとは3人の子供と2人の孫がいるので、今でも会っている」と述べた。