人工知能(AI)サービスの普及期待から一時上昇していた電力インフラ株が、一斉に下落している。中国のディープシークが「コスパ重視のAI」を発表したことで、AI・データセンター関連の電力需要が従来予想を下回る可能性があるとの懸念が一部で広がっているためだ。
31日の取引中、韓国のLSエレクトリックは7.99%安の22万4,000ウォン(約2万3,751円)で取引されている。暁星重工業は11.81%、HD現代エレクトリックは7.87%下落して取引中だ。イルジン・エレクトリック(ILJIN ELECTRIC Co.,Ltd)は9.93%安の3万2,600ウォン(約3,457円)、変圧器メーカーのサンイル電機は5.46%安の6万9,200ウォン(約7,337円)で取引されている。Cheryong Electric Co Ltdは7.54%の下落を記録した。

これらの企業は「ビッグテック」などがAIサービスに集中投資する中、一時株価が上昇傾向にあった。新たな電力需要先であるAIサービスの普及とデータセンターの増加が売上に有利に働くためだ。高度化したAIモデルの開発・運用に高性能半導体チップの需要が増えたことも要因の一つだ。通常、半導体チップはデータ処理量が増え、構造が複雑化するほど、より多くの電力を消費する。
一方、最近中国のディープシークは独自開発のAIモデルV3とR1を公開し、比較的に低性能の半導体チップでもChatGPTやGPT-4シリーズに匹敵する性能を発揮できると主張した。大規模AIモデルから核心的な「エッセンス」知識を抽出し、小規模AIモデルに伝達する蒸留方式などを通じて、より少ない計算資源で高いAI性能を実現できるという。
AI演算量が減少すれば、半導体チップとAIサーバーが消費する電力量もそれだけ少なくて済む可能性がある。市場の一部では、AIデータセンターなどでの電力需要が予想を下回るとの見方が出ている理由だ。
一方、金融投資業界とAI業界の専門家らは、こうした予測は過度な懸念だとの見方を示している。ディープシークの「コスパ重視AI」発表が電力需要に大きな影響を与える可能性は低いという。
電力消費の少ないAIモデルにより、小型デバイスでのAIサービス実装がより容易になる可能性がある。そのため、AIサービスはむしろより速く、より広く拡散し、全体の電力需要が増加する可能性が高いというのがIT業界の大勢の見方だ。
あるAIスタートアップ関係者は「現在はAI導入の極初期段階であり、開発コストの低下が投資減少につながることはない」とし、「投資コストが減少すれば、その分AIモデルとサービスの供給が増え、これは自然とAIエコシステム自体の拡大につながり、サービス利用量の増加をもたらすだろう」と語った。さらに「ディープシークの方式が一部ビッグテックのAI主導体制に亀裂を生じさせる可能性はあるが、AIの拡散に伴うインフラ需要を減少させることはないだろう」と付け加えた。
マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏も同様の見方を示している。彼はSNSのX(旧Twitter)アカウントを通じて「『ジェボンズのパラドックス』が再び現れた」とし、「AIのアクセシビリティが向上すれば、その利用が爆発的に増加するだろう」と述べた。
ジェボンズのパラドックスとは、技術進歩により効率性が向上した際に、資源使用量が減少するのではなく逆に増加する現象を指す。19世紀に蒸気機関の効率性が向上した際、一部では石炭使用量が減少すると予想されたが、実際には蒸気機関の普及により石炭消費量が増加したのが代表的な例だ。
最近北米などで増加した電力インフラ需要がAIサービスだけの影響ではないという点も、専門家が電力需要に大きな影響はないとみる理由だ。サムスン証券のキム・ドヒョンアナリストは「ディープシークの発表は電力需要への期待感を崩壊させるものではない」と分析した。最近北米などで急成長している電力需要は、AIデータセンターだけでなく、ロボットなどを活用した自動化・電動化の拡大の影響もあるとの説明だ。
NH投資証券のアナリスト、チョン・ヨンウ氏は「AIの資本的支出(CAPEX)の拡大基調が続いているため、電力インフラ産業の長期的な恩恵シナリオは有効だ」とし、「ディープシークの登場はむしろAI投資競争を激化させ、米国内外でAIインフラ投資のペースが加速する結果につながる可能性が高い」と予測した。