
エヌビディアが市場予想を上回る業績を発表した。昨年発売のAIチップセット「ブラックウェル」が好調で、中国発のディープシーク・ショックによるAIチップの需要減少の懸念を払拭した。一方で、グラフィック処理装置(GPU)の売上減少や米国の対中半導体輸出規制強化など、課題も残っている。
現地時間26日、エヌビディアは2025会計年度の第4四半期(2024年11月~2025年1月)の売上高が前年同期比より78%増の393億3,000万ドル(約5兆9,693億8,705万円)に達したと発表。市場調査会社LSEGが集計したウォール街の予想平均(380億5,000万ドル(約5兆7,751億1,256万円))を上回った。1株当たりの純利益(EPS)も0.89ドル(約133円)と、予想(0.84ドル(約125円))を若干上回った。
この好業績は、昨年発売のAIチップ「ブラックウェル」の爆発的な需要が牽引した。エヌビディアは前四半期のブラックウェルの売上高が110億ドル(約1兆6,695億4,634万円)に達したと明かした。ブラックウェルの前モデル「ホッパー」を含むデータセンター部門の売上高は356億ドル(約5兆4,032億5,906万円)で、全体の91%を占めている。コレット・クレス最高財務責任者(CFO)は「ブラックウェルは当社史上、単一製品として最速の売上成長を遂げた」と述べ、「データセンター部門収益の半分を占める」と強調した。
ブラックウェルの急成長には、「推論」モデル中心へのAIの開発競争が移行していることが背景にある。推論型AIモデルの開発と訓練には高性能チップが必要不可欠で、ブラックウェルがこの需要を独占したとみられている。エヌビディアは昨年、データセンター部門収益の40%以上が推論から生じたと既に発表していた。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は業績発表後のCNBCインタビューで「推論に必要な計算量は従来のモデルの100倍に達する」と指摘。「ディープシークが世界最高水準の推論モデルをオープンソースで提供したのは素晴らしい」と付け加えた。
エヌビディアが次世代の収益源と位置付ける自動車・ロボット部門の売上高は前年同期比103%増の5億7,000万ドル(約865億1,285万円)を記録。主力4事業の中でも3位に浮上し、10%増の5億1,100万ドル(約775億5,801万円)にとどまった専門可視化部門を上回った。
しかし、今後の課題も少なくない。主力のGPUを含むゲーミング部門の売上高は25億ドル(約3,794億4,235万円)と前年同期比で11%減。直近四半期の売上高成長率も過去7四半期で最低を記録した。エヌビディアは今四半期の売上高が前年同期比65%増加すると予想しているが、これが実現すれば成長率は8四半期連続で低下することになる。売上総利益率も73.0%と、前四半期の74.6%から低下している。
トランプ政権の対中半導体輸出規制強化の動きも懸念材料だ。ブルームバーグは先に、トランプ政権が無許可で中国へ輸出できるエヌビディアチップの種類の制限を検討していると報じた。フアンCEOは今回のカンファレンスコールで「第4四半期の対中売上高は前四半期と同水準だったが、輸出規制後は約半減した」と明かした。