
昨年の為替変動で打撃を受けたグローバル企業が、これを教訓に為替ヘッジ(Hedge・リスク回避)戦略の見直しを進めている。
現地時間18日、外国為替(FX)取引企業のミルテックFXが先月実施した調査によると、時価総額5,000万~10億ドル(約76億~1,518億円)規模の米英企業の財務責任者250名のうち、76%以上が昨年の為替変動により損失を受けたと回答した。
ミルテックFXのエリック・ハートマン最高経営責任者(CEO)は「予想外の急激な為替変動リスクが市場の不確実性を高めている」と指摘。「外貨オプションの購入増加とヘッジ期間の延長が企業の主な対応策となっており、これはより強力な保護と柔軟性を求める動きだ」と説明した。
実際、調査対象の約3分の1が為替ヘッジ期間の延長を計画していると回答。また32%が通貨オプション(将来の特定した時点で予め定めた価格での特定通貨を売買する権利)の購入増加を予定し、26%は為替ヘッジ比率の引き上げを検討していると答えた。
昨年の第4四半期、米国の多国籍企業はドル高の影響を大きく受けた。一般的に、ドル高は海外の売上の目減りにつながるため、企業利益とは反比例の関係にある。また、ドル建てでの原材料の購入コスト増加も招くこととなる。
ブルームバーグのドル現物指数は昨年、約8%上昇し2015年以来最大の上昇幅を記録。昨年12月にはドル価格が2年ぶりの最高値を更新した。しかしながら今年に入り、トランプ政権の経済政策の不透明感から約1.5%下落している。
英国企業も厳しい状況に直面している。英ポンドは昨年9月、対ドルで2年ぶりの高値を記録したが、年末には労働党政権の財政支出拡大への懸念から急落。今年のポンドはG10通貨の中で最も低調な推移を示している。
ハートマンCEOは「これらの要因が第4四半期の為替変動性を高めた」とし、「特に米大統領選を前に為替変動性が急上昇した」と述べた。ドルの変動性をヘッジするコストは昨年11月の大統領選前には、2020年のパンデミック初期以来の最高水準にまで達した。グローバルな為替変動性を測る「ドイツ銀行FX変動性指標」も昨年12月には1年ぶりに最高水準を記録した。