
主要ビッグテック企業が今決算シーズンにAIデータセンターへの資本支出を継続する意向を示したことから、AIへの過剰投資に対する懸念が一部で浮上している。「ディープシーク・ショック」以降、この傾向が顕著となり、AI投資を控えてきたアップルが再評価されている。かつてAI革命で後れを取り、イノベーションも終わったとの批判を受けていたことを考えると、「ディープシーク・ショック」がアップルにとって危機を転機に変えたといえる。
マーケットウォッチは11日(現地時間)、AI分野で出遅れたとみられていたアップルが、AIハードウェアへの投資をほぼ行っていないという点で「ディープシーク・ショック」後に注目を集めているとのアナリストレポートを紹介した。AI投資の効率性が注目される中、ウォール街ではフリーキャッシュフローに関心が高まる可能性が高く、最終的にアップルが「勝者」となる可能性があるという。
メリウス・リサーチのベン・ライツ氏は、前日発表の報告書で、アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフトなど4大クラウド企業が資本支出を増加させることで、キャッシュフローに大きな影響を受けると予測した。
ライツ氏は、「株式価値は将来のキャッシュフローの正味現在価値(NPV)を表すという教科書的定義は、多額の投資を要するAI時代には適用が難しい」と指摘した。しかし、先週の決算発表で他のビッグテックとは異なり、資本支出に慎重で計画的なアプローチを取ると表明したアップルが、「最後に笑う者」となる可能性があると述べた。
アップルが最終的に勝利を収める可能性があるのは、モバイルAIにおける真の「有料道路」だからだという。彼は「重要なのはフリーキャッシュフローだ」とし、アップル自身は大規模投資を行わず、OpenAIや中国のBaiduと提携しながら、パブリッククラウドを活用してモデルを訓練し、サービス事業を運営できると指摘した。
つまり、アップルは表面上には過剰な資本支出と運営費を他のテック巨大企業に転嫁する構造を築いているというわけだ。一方で、「アップルにAIを提供しようとする企業の支出により、AIへの資本支出ブームは数年続く可能性がある」と述べた。
この戦略により、「アップルは今後数年間で収益が加速し、現在の純利益を構造的に上回る余剰キャッシュフローを生み出す可能性がある」と結論付けた。
現在、アップルの余剰キャッシュフローは他のビッグテック企業とは異なり、純利益を上回ると予想されている。ライツ氏は、アップルが2024会計年度に純利益1,040億ドル(約15兆8,100億円)を上回る1,090億ドル(約16兆5,700億円)の余剰キャッシュフローを創出し、余剰キャッシュフローを報告純利益の約5%増で換算したと指摘した。また、アップルは12月四半期に265億ドル(約4兆円)の自社株買いを実施し、「近い将来」四半期ごとに300億ドル(約4兆5,600億円)を再び買い戻す予定だ。
さらに、彼は「アップルの余剰キャッシュフロー比率が2027会計年度まで持続可能で、より高価なiPhoneの登場により売上も加速する」と付け加えた。
一方、クラウド企業の場合、「純利益に対する余剰キャッシュフロー比率がより懸念される」と述べた。特に今後、売上が予想を下回る場合はさらに懸念が高まるという。
ライツ氏によると、2025会計年度におけるGoogle、Microsoft、Amazon、Metaの余剰キャッシュフロー予測値が、それぞれ推定純利益を29%、33%、24%、34%下回る見通しだという。
このため、今年のクラウド売上が予想を下回り、市場がディープシークのようなイノベーションで混乱すれば、NVIDIAなどのマグニフィセント7銘柄に対する投資家の忍耐が尽きる可能性があると予想した。一方で、この傾向は相対的にアップルにとってはマイナスではないとの見方を示した。
ゴールドマン・サックスも前日時点で、「NVIDIAを除くマグニフィセント7企業の四半期決算に好調なポジティブサプライズが見られない」とし、AIを収益化する可能性が高いAIソフトウェア企業などへの投資シフトを提言した。
