米連邦準備制度理事会(FRB)は、17日から18日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを実施する見通しだが、そのペースについては慎重な姿勢を示す可能性が高いと見られている。これに対し、欧州中央銀行(ECB)は、今後の大幅な利下げを示唆しており、その影響でユーロに対するドル高が進行している。このような状況の中で、ドナルド・トランプ次期米大統領が再びFRBに対してドル安を求める可能性が指摘されている。
FRB、「ハト派的利下げ」へ
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、16日付で「ジェローム・パウエルFRB議長は、政策金利を0.25ポイント引き下げた後、中央銀が今度さらに慎重なペースで利下げを進める準備があることを強く示唆する可能性がある」と報じた。
FRBは今年下半期、消費者物価指数(CPI)上昇率が目標の2%に接近する一方で、労働市場の冷え込みも見られたため、9月に0.5ポイント、10月に0.25ポイントの利下げを実施。しかし、米国経済は予想外の好調を示し、物価は反発している。実際、12月に発表されたS&P総合購買担当者指数(PMI)は56.6となり、3年ぶりの高水準に達した。これに対し、CPI上昇率は9月に2.4%に低下したものの、10月には2.6%、11月には2.7%に再び上昇している。
トランプ次期大統領の就任は、物価上昇の一因となる可能性があると見られている。関税引き上げが輸入品の価格を押し上げ、不法移民の追放が労働力不足を招き、結果として人件費が増加することが予測されている。また、ビットコインや米国株式市場の急騰は資産効果を引き起こし、物価をさらに押し上げる要因となる可能性がある。
こうした懸念を受けて、一部のタカ派FRB理事は、今回のFOMCにおける利下げには反対する意向を示している。ミシェル・ボウマンFRB理事は6日、「早すぎる利下げは需要を不必要に刺激し、インフレ圧力を再燃させる恐れがある」と述べ、慎重な姿勢を強調した。タカ派の見解では、過度に金利を引き下げることで、今後4年から5年間にわたって物価上昇率が目標を超える結果を招く可能性があると懸念している。
シカゴ商品取引所のフェドウォッチによれば、先物市場はFRBが今回のFOMCで0.25ポイントの利下げを行う確率を95.4%と予測している。また、市場参加者の79.9%は、来年1月の政策金利が年4.25%~4.5%に維持されると予測している。
一方、欧州中央銀行(ECB)は景気後退と物価下落が予想される中で、利下げを実施する方針を示している。クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は、「今後のデータが基準を裏付けるなら、さらなる利下げが予想される」と述べ、経済の不確実性が物価の下振れリスクを強めていることを説明した。ドイツやフランスでは、景気後退と政治的不安定が重なり、成長を阻害している。フランス中央銀行は来年の経済成長率予測を1.2%から0.9%に下方修正し、OECDはドイツの2025年成長率予測を1.1%から0.7%に引き下げた。
市場では、ECBが来年上半期に政策金利を1ポイント引き下げ、下半期にさらに利下げを行う可能性があると予測されている。また、フィデリティ・インターナショナルは、ECBが現在の年3%の預金金利を来年1.5%まで引き下げる可能性を示唆している。
1ユーロ=1ドルの水準が崩れるか
こうした米国とEUの金利差拡大により、ユーロ/ドルの為替レートはドル高に進展しており、9月には1ユーロ当たり1.119ドル(約172円)からの現在の1.051ドル(約162円)まで下落した。一部では、ユーロ/ドルのパリティが崩れる可能性が指摘されている。
トランプ次期大統領の公約と矛盾するドル高が、FRBへの圧力となる可能性が指摘されている。ブルームバーグは、米国とユーロ圏の金利差拡大が予想され、すでにドル高が進行していることから、トランプ次期大統領の輸出拡大政策に支障をきたす恐れがあると報じている。
トランプ次期大統領は2017年の就任初年に、ECBがゼロ金利政策を維持する中でFRBが利上げを実施した際、「ユーロはドルに対して『狂ったように』下落し、大きな輸出および製造業の優位性を得ている」と述べ、パウエルFRB議長に対して「ドル高が進行することで、製造業者の競争力が低下し、輸出に悪影響を与えている」と批判した。現在、金利差が拡大する中でドル高が進行しており、トランプ時期大統領の公約に反する形で、輸出競争力に影響を与える可能性が高まっている。
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