トランプ次期米大統領は、メキシコとカナダに対し国境管理の強化を求め、応じなければ25%の関税を課すと警告した。さらに、中国に対しても追加関税を示唆し、この発言が26日のグローバル市場を再び動揺させた。
現地時間25日夜(アジア時間26日午前)、トランプ次期大統領は関税の脅威に再び言及。この発言を受けて、カナダドルは4年ぶりの安値を記録し、メキシコペソは2022年以来の最安値で取引された。中国元も域外市場で下落した。
この影響で、カナダとメキシコに現地工場を持つ日本・韓国の大手メーカーや、欧州の自動車メーカーであるステランティスなどの株価が軒並み下落。東京市場ではトヨタが3%、日産が5%下落し、欧州市場ではステランティスが4.7%の急落を記録した。
欧州全体のSTOXX50先物指数は1%の下落を記録し、トレーダーらは欧州が次のトランプ氏の標的になるのではとの懸念を強めている。
米株価指数先物は、東部時間午前5時時点で前日比横ばいとなっている。自動車大手のGMやフォード、テスラなども、寄り前取引で0.5〜2%の下落となった。
アナリストらは、投資家がトランプ前政権時と同様、市場を揺るがす突発的な発言に備える必要があると警告している。
一方で、別のアナリストは、トランプ次期大統領が1月の就任までに、メキシコやカナダに対する姿勢や関税に関する政策を変更する可能性もあると指摘している。
トランプ次期大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、カナダとメキシコの国境における移民や違法薬物の取り締まり強化には関税が必要だと主張した。「中国はフェンタニル密売人に死刑を科すという約束を守っておらず、メキシコ経由で前例のない量の薬物が米国に流入している」と指摘し、、さらに「彼らが止めるまで、全ての中国製品に追加で10%の関税を課す」と強調した。
トランプ次期大統領は以前、中国製品に対して既存の関税に加え60%の関税を課すと述べていたが、今回の発言で追加の10%関税を示唆したことには矛盾が見られる。
アジア・ソサエティ政策研究所中国分析センターのニール・トーマス氏は、「この発言は特にフェンタニル取引の取り締まりを目的としており、トランプ氏が以前約束した全中国製品への60%関税の免除を意味するものではない」と説明した。
また、メキシコとカナダからの輸入品に高関税が課される場合、特に自動車産業をはじめ、3カ国が高度に統合された消費財産業に影響を与える可能性がある。
特に影響を受けるとされるのは、メキシコの自動車部門や、米国消費者向けに電子機器、プラスチック、その他製造品を輸出するメキシコ中部・北部の工場群だ。近年、米国とメキシコの貿易は拡大し、メキシコは米国最大の貿易相手国となっている。メキシコ政府は、対米貿易規模を年間8,000億ドル(約121兆1,473億円)と推計している。
カナダの対米輸出品の57%は、石油・ガスなどのエネルギー製品、自動車、消費財が占めている。
もしカナダからの全輸入品に25%の関税が課されれば、米国のエネルギーコストに大きな圧力がかかることになる。
トランプ政権下で商務長官を務めたウィルバー・ロス氏は今月初め、カナダから輸入するエネルギー製品に関税を課すことは「米国のコストを上げるだけで意味がない」と指摘した。
米国の自動車産業もカナダと密接に関連しており、利益率が非常に低いため、カナダ自動車部品工業会のフラビオ・ボルペ会長は、25%の関税が「非現実的」だと述べた。
ベアードのアナリストらは、この関税が「米国の自動車産業を標的にしている」とし、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課すことで、米国の自動車販売台数が年間約110万台減少すると試算を発表している。この推計は、両国から米国への自動車および自動車部品の直接輸入に基づいている。
メキシコとカナダに対するこうした動きは、トランプ前政権時に北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を強要し、鉄鋼など特定分野に関税を課した貿易摩擦の再現となる可能性がある。現在の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)では、幅広い分野で無関税貿易を認めている。
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